戈木クレイグヒル滋子氏の著になる書。医学書院出版。
グラウンデッドセオリーアプローチは、インタビューや医療の問診などの発話記録を基に概念構築を行ない理論を得る方法として、介看護の場などで取り入れられている質的研究方法である。
臨床で使われる方法であるから、人工物の利用状況を調査する方法にも応用できると思う。応用というよりむしろ、エスノグラフィー視点のユーザビリティ調査技術を強化するために役立つと考えられる。大まかには、まず観察およびインタビューから得た情報をテキスト化し一文毎に切片化する。これに対して本書で解説されているようなラベル付与やカテゴリー化を行いつつ、プロパティやディメンションを発見するという手順をとる。プロパティは概念の枠組みを決める一つの杭のようなものであり、プロパティやディメンションの集まりで概念を考察する。その概念は調査対象の理論的解釈を可能にするとともに、観察事実と合わせれば対象の理解を深めることに役立つ。
こう言うと非常に便利で都合の良い手法のように聞こえるが、ラベル付与やカテゴリー化、プロパティやディメンションの発見などには経験が必要だし、そもそも質的研究ということで統計処理のように誰がやっても同じ結果が得られるものではない。しかし介看護の現場で使われるように、対象を正しく理解するためには、良い方法だと思う。
戈木氏の、グラウンデッドセオリーアプローチに関するもう一冊の解説書「グラウンデッド・セオリー・アプローチ-理論を生みだすまで」には、切片化やラベル付与、プロパティやディメンションについて更に詳しく書かれている。本手法に興味のある方は、是非読んで見るといい。僕は本書の方を先に読むことをお勧めするが。
さて、グラウンデッドセオリーアプローチは概念を考察し理論的な枠組みを見つける手法なので、僕もこれを使ってFutuer Centered Designとその役割や意義を再確認してみようと思う。