情報病

三浦 展,原田曜平著.角川書店

今世代の若者の価値観がいかなるものか,ゆとり教育を受けた第一期生を今年迎える管理職としては関心大であったため,思わずこの本を手に取ってしまった.デプスインタビューのログのような形で書かれているところは,率直に面白かった.
本書では,ゆとり教育を受けた今の大学生を第4世代の若者と呼ぶ.第4世代の若者は携帯電話を必需品として扱い,友人知人と24時間繋がり合う関係の中で,個性を持とうとせず,個性に価値を見出ださない.そこそこの充足で満足し,多くを求めず波風たてず,空気を読み,重たい話題を避けながら会話する若者.強い意志表示を好まず,ゆるい表現で「みたいな」を繰り返し,「だよねコミュニケーション」で共感し合う.携帯世代だから横の関係が極端に発逹し,仲間に囲まれた生活を意識する.学食で一人で昼食をしていると〔あの人友達いないのね〕と思われるのが嫌で,トイレで昼食を取る女子学生がいるそうだ.「便所飯」というらしい.ここまでくると病的にも感じるが,若者いわく男子学生もあり得るらしい.
消費はというと,維持するのが大変な高いものは好まず,安いもの,手軽に使用できるものしか買わない.車に興味が無いがその理由は,一人だけ飲めない人ができてしまうのを避ける意味がある.車で行こうと提案するのはKYだ,ということらしいのだ.高い海外旅行にも行かない.行けない友達が出来るよりも,皆で行ける近場が人気らしい.近場なら2,3万円位なので,皆問題なく行けるというのが理由だとか.娯楽費とか交際費という捉え方じゃなく,携帯の維持費さながらに〔関係の維持費〕であり,〔関係消費〕であるとしている.現代の若者に受け入れられるものとは何なのか.気軽さ,気安さ,〔皆が持っている感〕を作為的ではなく,リアルに表現したモノが受け入れられるのか.小難しく無くて,特徴が分かりやすく,ストレートに価値が伝わるものでないとけない.理屈ではなく感覚的に〔これいいじゃん!〕と共感できるものが受けるのだろう.
これからの消費者である第4世代の若者の心理をさぐるには,デプスインタビューが良いかも知れない.デプスインタビューで本音を聞き出すのは難しいが(特にラポールを形成するところが),本音が聞ければ若者需要も掘り起こせるかも.一日の行動に同行して取材するなど,本当の意味でのエスノグラフィーをやらないと若者のニーズも捉えられないだろう.

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